喪章と着用場面について

喪章(もしょう)は、故人様の死を悼み弔う気持ちを示す為に身に着けるリボンや腕章を指します。その名の通り弔事においてのみ使用されるものである為、他の場面では用いません。黒と白、あるいは黒のみを基調としたデザインで昔から広く使われてきました。喪章は元来「故人の死を悼むこと」を目的として着けるものです。しかし現在は弔意を示す為に着けるものとしての意味はそれほど強くなくなってきています。その背景にはかつて日本における葬儀ではご遺族は白装束・ご会葬者は羽織袴などの正装を着用しており、服装でご遺族とご会葬者が分かるようになっていました。しかし、洋服を着用する文化が浸透していく中でご遺族もご会葬者も黒の喪服を着用するのが一般的になったことで、服装での区別ができなくなり、一目で「立場が分かる目印」として喪章が用いられるようになったとされています。この為、一般的には遺族や関係者以外の方である主に参列者が喪章を着けることはありません。また、喪章を着けずに通夜・葬式が行われることもあります。喪章は仏具店や葬儀式場近くのスーパーマーケットなどで取り扱っている場合もあります。喪章の種類は大きく分けて二種類あり、リボン型と腕章型に分けられます。
リボン型についてはデザインは比較的多岐に及んでいます。安全ピンでとめるケースが一般的で、具体的には白いばらをモチーフとしそこに繋がるかたちで黒と白の布が下げられているタイプ・安全ピンから細長い黒い布が伸びているタイプ・白と黒の布で円形の花を描きその下部から白と黒の布が垂れ下がっているタイプ・黒い布を中心として周りに白布を配して花を描きその下部から布を垂れ下げるタイプ・黒い布をねじりリボンのようにして止めるタイプなどそれぞれ形は違いますが、どれもリボン型と呼ばれていて、胸元に着けることが多いという特徴があります。黒一色で作られることもありますが白も合わせて用いられることもあるのも特徴のひとつです。
腕章型についてはリボン型ほどデザインは豊かではなく、一般的には黒一色の布で作られています。あまり多いとは言えませんが、家紋が入れられた腕章型の喪章もあり、この場合は家紋が白で描かれていることが一般的です。腕章型の喪章はある程度太さのあるもので、概ね10センチ程度の幅で作られています。安全ピンでとめることのできるタイプもありますが、マジックテープで止めることができるものも多く喪服を痛めないようにという配慮がなされています。また、喪章の場合は男女の別はありません。

喪章は、喪主や遺族の方であるという目印ともなるものですので通夜・葬儀の場面を通じて基本的にはずっと着用したままで問題ありません。ただし、受付係ならば受付業務が終え火葬が終わってからならば外しても問題ないでしょう。着脱のタイミングについては明確にこの場面といえるものはありません。もしもどうしてもタイミングが気になるようであれば、葬儀に詳しい周囲の方や葬儀社のスタッフに確認してみてください。
ここからは注意点や確認事項についてお伝えしていきます。まず、喪章の着用義務についてですが、結論から申し上げますと喪章は必ず着用するという決まりはありません。着ける・着けないかの判断は喪主や遺族の方の判断やそのときに着用している服、葬儀の規模によっても異なります。また、近年において喪章は喪主・遺族であることを示すものという意味合いが強くなっています。その為、正式な喪服を着ている場合は着用しなくても良いという価値観が一般的になってきています。この場合における「正式な喪服」というのは、「正喪服」と呼ばれるものです。葬儀における格式が高い装いで、参列者は一般的に着用することはありません。
また、よく勘違いされている知識として「喪章をつければ通常のスーツでも喪服になる」という考え方をされている方がいらっしゃいますが、それは間違いです。喪章をつけたとしてもリクルートスーツやビジネススーツは喪服にはなり得ません。喪章を着ける立場となると、故人に近しい立場あるいは喪主や遺族の方から頼まれてお手伝いする立場となることが通例ですから、服装マナーが誤っているという様な失礼があってはいけません。必ずTPOにあった服装をしていくようにしてください。

喪章を着ける方について

喪章は元来であれば故人に対する弔意を示すものではありますが「参列する全ての人が着けるもの」という性質は基本的に持っていません。一般的に喪章を着けることができるのは、「故人様の4親等にあたる人」までとされています。ですが実際の通夜・葬式の現場において4親等にあたる人までが喪章を着けるケースはほとんど見られないと考えてよいでしょう。しかし喪章の着用に関して明文化されている風習ではありません。その為、その家庭や価値観によって喪章を着けるケースも異なります。
喪章は周りから見て遺族であることや関係者であることをわかりやすくするという役割も担っています。弔問客や少し遠い親戚が、問い合わせを行ったりお悔みの言葉を述べたりする対象を示すものでもあります。このような背景もあってか、現在は喪主(施主)のみが喪章を着けるというケースも増えてきています。また、受付などを務める人が喪章を着けるというケースもあります。参列者にとっては受付などで喪家の手伝いをする人は「喪家側の立場の人間」として映りますし、そのような振る舞いが求められます。受付の人は喪章を着けて、自分が喪家側の立場の人間であること・問い合わせの窓口になることなどを示す必要が出てくる場合もあり、遺族が着ける喪章と受付係などが着ける喪章は、別々のものが用意されることもあります。