冠婚葬祭におけるパール
冠婚葬祭において推奨されるパールは、持ち主の美しさを内面から引き出してくれると言われているだけでなく、涙を象徴する宝石という意味を持っています。「月のしずく」「人魚の涙」 とも呼ばれていることをご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。その由来には「人魚が叶わぬ恋に涙した際にその涙が海にこぼれおち宝石となった」という言わずと知れた伝説が背景にあります。また、船乗りや漁師の方などが海難事故にあわないようにお守りとしてパールが贈られたというエピソードもあるそうです。パールは母体である貝の内側に入った異物を核にして生成される宝石で、強い守護の力が働く宝石と言われ持ち主を守ってくれる効果があるとされています。伝統的なマナーでパールを身につけているという心持ちよりも、持ち主である貴方を不幸にならないようにパールが守ってくれるという心持ちでいると安心感も持てるのではないでしょうか。
故人を偲ぶため華美な服装を控えるという考えから、本来弔事の場において結婚指輪以外のジュエリーを身につけない方が良いとされていました。また、長く和装文化であった日本において喪服の際の装飾品は結婚指輪以外のジュエリーを身に着けることはマナー違反とされていました。これは現代でも言えることで、和装においては結婚指輪以外を身に着けることは華美すぎる為、マナーに反するとされています。
そんな中で弔事の場においてパールが推奨されるようになった背景は、イギリスのヴィクトリア女王がジェット(海の底に沈んだ木の幹が長い時間を掛けて化石化した宝石)をモーニングジュエリーとして愛用したことから世界的に主流となり、日本の皇室においても女性皇族方にジェットのモーニングジュエリーが取り入れられている程に伝統的なマナーとされていました。1965年、イギリスの女王であるエリザベス2世はウィンストン・チャーチル元英首相の国葬にジェットではなく、パールのジュエリーを身にまとい参列しました。その装いを周りの貴婦人たちも倣い、それ以降パールがモーニングジュエリーとして広く国際的に認知されるようになっていったのです。
また、パールは涙を象徴する宝石という意味を持っていますので、パールを身に着けることは故人や遺族に哀しみの気持ちを表すとして定着していきました。さらにダイヤモンドの様に光を放つような輝きではなく、光を受け優しく輝くパールは華美になりすぎないという印象がある事からも、冠婚葬祭のすべてに推奨されるようになったのです。
注意点やマナー
パールといえば、ホワイトパールを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。実際に最も幅広く使用されているパールはホワイトパールといえるでしょう。しかしパールには様々な種類があり、色味においても多くの種類があります。ホワイトパール以外には、ピンク系・ブルー系・グリーン系・ゴールド系・ブラック系と言った様々な色味のものがあります。葬儀の際にパールのアクセサリーを身に付ける場合、パールの色味はホワイトパールかブラックパール・ブラックに近いグレーパール・ジェットパールと言った色味のものを選ぶようにします。葬儀では派手な色の服やバッグ・装飾品などはマナー違反となりますから、パールのアクセサリーであっても明るい色味のものは避けるのがマナーです。ホワイト・ブラック・ブラックに近いグレー・ジェットなどの色味のパールを使用したアクセサリーであれば格の違いも特になく葬儀の席で身に付けることが可能です。ただし、ここで注意が必要なのが人によってはブラック系の色味のパールを贅沢品として捉えられる場合もある為、気になる方はホワイトパールのアクセサリーを身に付けて参列されると安心でしょう。一般的に葬儀の席で用いられるパールのアクセサリーはホワイトパールの場合が多い傾向にありますが、近年ではブラック系のパールアクセサリーを身に付けて参列される方も増えてきており、特にマナー違反とはなりません。
続いてパールのサイズについてですが、サイズについても様々なものがあり珠の大きさによって印象が変わります。葬儀の際に身に付けるアクセサリーを選ぶのであれば、中粒と言われる珠のサイズが直径7mm~8mmのものを選ぶと良いでしょう。あまり大きなサイズであると派手な印象を与えてしまいますし、直径7mm~8mmサイズであれば葬儀だけではなく様々なシーンで使用することができる為、重宝するでしょう。葬儀の席でイヤリングやピアスなどを身に付けることはマナー違反ではありませんが、その際には真珠が一粒のみ施されているシンプルなデザインのものを選びます。真珠と一緒に他の装飾が施されているタイプ・垂れ下がるタイプ・金具がゴールドのタイプなどは避けなければなりません。この際のパールのサイズについても、定番の中粒である直径7mm~8mmのものを選ぶようにしましょう。続いてネックレスについてですが、葬儀で身に付けるネックレスは必ず「一連のもの」を選びます。二連のネックレスは不幸が重なるとされていますのでマナー違反となります。また、真珠が一粒のみ施されているデザインのネックレスもマナー違反となりますので注意が必要です。ネックレスの長さについては、鎖骨のラインにかかる程度の長さである40cm前後のものが最も格式が高いとされていますので、葬儀の席だけに限らず様々なシーンでも身に付けることが可能です。